〜 朝日新聞 夕刊 「ヘルシー」 より 〜




 うんちは健康のバロメーター。便秘に悩む女性も多いし、寝不足や風邪気味だったりすると水気が多く、出方もだらしない。体調が良いと硬さもほどよく、出した後は気分もさわやかになる。では、絶好調のときにはどんなうんちが出るのだろうか。「理想のうんち」を求めて福岡へ行った。

チェック法
硬さ・太さはバナナが目安
精神の健康状態も映す

 福岡市中央区で開業医を営む安藤孫衛さん(78)。平成7年10月に福岡市内で「ウンチ学会」を開き、市民を集めて便と健康について講演した。自然食の会(会員約500人)の会長でもあり、有機野菜を育てたり、健康講座を開いたりしている。
 「うんちは食べたものが体の中を通ってできあがる。正しい食生活をしているかどうかがチェックできる。あと、うんちを作る大腸は脳の次に神経が集まっている大事な臓器だから、精神の健康状態もわかる」という。
 「理想のうんち」を見分ける主なポイントを挙げてもらった。



硬さと太さはバナナと同じくらいが理想的−−−。
大腸で水分の吸収がうまくいっているかどうかがわかる。水分75%のうんちがちょうどいいそうだ。軟らかいのは食べ過ぎで、大腸が食べたものを処理し切れていない時。逆に硬かったり、コロコロとした小さなのが出ると便秘の前兆。食物繊維を十分に取る必要がある。 ストレスや過度の緊張も影響が大きい。学校でテストが始まる直前の個室トイレが込んでいたのを思い出す。大腸には神経が多く集まっていて、精神の微妙な変化をとらえやすい。うんちの形が変わったら、上司に見せるなりして、休むことが大事なのだが・・・・・。

ちり紙がいらない−−−。
健康な大腸の壁には、水の膜が張っている。うんちもスルリと出やすく、肛門(こうもん)の周りも汚れない。体に異常があると水の膜がなくなり、腸の壁に汚れがこびりつく。うんちをすると、汚れも壁つたいに押し出され、周りを汚してしまう。

においが少ない−−−。
大腸内に動物性たんばく質が入ると、腐敗菌がこれを分解。インドールやスカトールといった発癌物質やアンモニアなどを作り、においのもとになる。肉類、卵などを抑え、繊維を多く取るのがいい。

水に浮く−−−。
ガスを含むからだ。大腸内では発酵菌が繊維を発酵させて分解し、体に必要な酸や酵素を作る。その時、炭酸ガスが発生してうんちと混ざる。混ざらずに直接体外に出るのが、おならだ。沈むうんちが出た時は、やはり繊維を取らなければいけない。 色も要注意。普通に茶色であれば問題ないが、黒いと小腸が、赤いと大腸が出血している疑いがある。また、白いと胆のうに異常がある可能性があるので、すぐに病院へ行くこと。 安藤さんによれば、健康なうんちを出すには食生活、運動、休息と精神状態の4つがバランスを保っている必要があるという。特にうんちの直接の成分になる食べ物が大事だ。 「でも、理想のうんちが出る人は、現代の日本には少ないでしよう。戦後、加工食品や化学肥料で育てた野菜が急激に増え、食べ物の質が変わってきている。人間の体はその変化についていけてない」と安藤さんは分析する。 では、理想のうんちを出すための理想の食べ物とは、どういうものか。
(平成8年2月26日)


食事の法則
ご飯・みそ汁・漬物が基本
あとは運動と十分な睡眠
 健康な、理想のうんちが出るようにするためには何を食べればよいか−−−。平成7年10月、福岡市で健康市民講座「ウンチ学会」を開いた自然食の会(安藤孫衛会長)の事務局長安藤かおるさん(43)に聞いた。 「人間の体は環境に適応するため、遺伝子を少しずつ変えながら今の形になった。人類の歴史や体の仕組みを見れば、体に適した食べ物がわかり、正しいうんちも出る」という。そこで、会が掲げる3つの法則は、 1.適応処理、 2.バランス、 3.身土不二(しんどふじ)。



「適応処理の法則」
人類の歴史を振り返って、その間に何を食べてきたかを考える。生命の誕生は海であったため、今の人間に必要な栄養素も海にあるという。つまり魚介類や海草だ。また、我々の直接の祖先である猿は、草、根、木の実を食べたから、これも適している。
「バランスの法則」
栄養学的なバランスではなく、自然の中にあるバランスの法則を見る。 たとえば歯の種類。全部で32本あるうち、臼歯(きゅうし)が20本、門歯が8本、犬歯が4本。臼歯は字のごとく臼(うす)状で、豆や穀物をかみつぶすのに適している。カッターのような門歯は野菜をかみちぎり、犬歯は肉類をひきちぎるためにある。臼歯・門歯・犬歯の本数の割合は5:2:1。だから食べる穀物・野菜・肉も同じような割合で取るのがベストということだ。 また、材料はその一部ではなく、全体を食べることが重要。野菜なら葉から根まで、魚なら頭、骨にしっぽまで。牛を食べるなら、肩やロースだけではなく、レバーやしっぽまで、何もかも食べなければならない。
「身土不二の法則」
人類も生態系の一部であることを考える。住んでいる土地で取れた、その季節のものが健康に適している。また、「命あるものを食べる」のも大事だという。米だったら、水をかけてもふやけるだけの白米よりも、ちゃんと芽が出てくる玄米を食べる。もちろんインスタント食品は「死んでる」からだめだ。

 この三法則を考慮して、自然食の会が考え出したのが「5・1・1・3食」だ。玄米を5、大豆を1、貝または小魚か小エビを1、野菜か海草を3の割合で食べる。また、大腸の発酵菌を増やすために、味噌、醤油、漬物などの発酵食品を合わせると完ぺきという。
 これでは、弥生時代の食事に近い。「そう。人間の体は、そんなに早くは変わらない。特に戦後は、日本人の食生活は著しく変わった。だから、体が変化についていけないでいる。その証拠に成人病が増えている」と分析する。
 現代人が正しいうんちを出せないのは、 1.米の皮と野菜で取っていた繊維が足りない、 2.肉の食べ過ぎで腸内の腐敗菌が増えた、 3.食事の半分はご飯だったのが、逆におかずが多くなった、などを挙げる。
 でも、忙しいサラリーマンや独身の人は外食がほとんど。材料を葉から根まで食べられないし、バランスを考えるのも難しい。
 「何も難しく考えなくてもいい。ご飯、みそ汁と漬物。この3点だけで、正しい食事の8割は達成できる。外食が多い人でも、できるだけ定食のようなものを食べること。あとは適当な運動と十分な睡眠で『快便』を保証します」。

(山口 智久)
(平成8年2月27日)

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