〜 朝日新聞 夕刊 「ヘルシー」 より 〜


−もっと知りたい−

痔の3つの種類
最も多いのは痔核(イボ痔)
イボ痔の治療はどうするの?
女性に多い裂肛(キレ痔)
治療がやっかいな痔ろう
痔ろうの手術は早い方がいい?
生活習慣の見直しで再発の防止を!


痔の3つの種類

三人に一人は「痔(じ)主」ともいわれるほど、痔に悩んでいる人は多い。ただ、痔は肛門周辺の病気の総称で、一つの病気ではない。 1.痔核(イボ痔) 2.裂肛(キレ痔) 3.痔ろう−−の三つに大別され、それぞれ、原因や症状、治療法も異なっている。この中で最も多いのが、痔核。痔全体の約半数を占める。次いでキレ痔、痔ろうの順だが、合併している人もいる。 痔の悩みは「なった人でないとわからない」ともよくいわれるが、痔に悩む動物というのもあまりきいたことがない。人間特有の病気であるようだ。 元兵庫医大講師の岡空達夫・岡空肛門科院長(吹田市)によると、人間は直立して歩くため、動物に比べて骨盤周辺の静脈の血液の流れが悪くなるなど、うっ血が起こりやすいという。痔の中でも痔核は、肛門周辺の静脈のうっ血が原因で起こる。また、人間は状況によって、便意があってもトイレを我慢する。そのため、便秘になりやすく、排便時にいきみ過ぎてキレ痔になりやすいらしい。 紀元前二千五百年頃にはエジプトの宮廷に肛門病の医師がいたそうで、中国でも紀元前八一三世紀にあたる春秋戦国時代の書物 に痔の名称が見られるという。人類とは実に古い付き合いの病気だ。

(平成8年4月30日)

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最も多いのは痔核(イボ痔)
痔(じ)の中で最も多いのは、痔核(イボ痔)だ。直腸や肛門の周辺は静脈が網目状に取り巻いており、本来はたえず収縮している。この血液の流れが悪い状態が続くと、うっ血が起こり、はれ上がってしまう。これが痔核だ。直腸の方にできたときは外痔核、肛門部なら内痔核と区別されるが、進行すると、お尻からイボのように粘膜部分が飛び出してくるため、イボ痔と呼ばれる。 岡空肛門科(吹田市)の岡空達夫院長によると、痔核のできやすさにはあまり男女差はないが、女性では特に妊娠、出産時に発病しやすい。妊娠・出産時に大きくなった子宮が周辺の臓器を圧迫し、肛門周辺もうっ血しやすくなるからだ。 一般に痔核の引き金になることで知られるのは便秘や下痢などの排便異常だ。硬い便をいきんで出したり、トイレに長居したりすると、よりうっ血が起きやすくなる。長い間座ったままだったり、逆に立ち続けたりすることや、冷え、アルコール、肉体的、精神的なストレスもうっ血の誘因だ。「お酒を飲みながら、徹夜で麻雀をするなど最悪」と岡空さん。私も学生時代にイボ痔 の「痔主」になり、今もストレスがたまったり、飲み過ぎたりすると、すかさず”彼”が顔をのぞかす。日常生活の注意が肝心だ。

(平成8年5月1日)


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イボ痔の治療はどうするの?
イボ痔(じ)とわかったとき、治療はどうするのか。まず思い浮かぶのは、薬での治療だ。坐薬や軟膏などのテレビコマーシャルを見ていると、すぐにでも治る気になってくる。確かに症状が軽い場合は、直腸の方にできる内痔核も肛門(こうもん)側にできるが外痔核も薬で治まることが多いが、はれが大きくて痛みが強い外痔核や、肛門に戻らなくなった内痔核のように症状が重いと、切除などの処置や手術が必要になる。 内痔核の場合、よく行われるのが、硬化療法といわれる治療と、結さつ療法といわれる治療だ。このうち硬化療法は、硬化剤という薬を痔核の静脈に注射して痔核を壊死(えし)させる。一方、結さつ療法は輪ゴムで痔核の根元を縛って、腐らせて落とす。どちらも外来でできる処置だが、再発の可能性があるのが難点だ。 そのため、完全に治療するには痔核に血液を送っている血管をしばって痔核を切除する手術が必要だ。一般の病院では二週間ほどの入院がいるが、肛門科だけの専門の診療所では入院せずに手術が受けられるところもある。一方、外痔核の方は内痔核に比 べて治療法は単純で、局所麻酔で痔核の中にたまった血の塊を取り除く手術ですぐに治る。まずは専門医によく相談しよう。

(平成8年5月4日)

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女性に多い裂肛(キレ痔)
痔の中で女性に多いのが、キレ痔の名で知られる裂肛(れっこう)だ。硬い便をいきんで出した時に肛門を無理に広げてしまい、文字通り肛門が裂けてしまうというパターンが多い。便秘症の人は硬い便が出やすいため、便秘自体が多い女性に目立つようだ。 ただ、「一般に男女ともに高齢者では腸の動きが衰え、便秘になりがちだが、肛門の筋肉のはりも減ってくるため、硬い便が出ても肛門が切れにくい。キレ痔自体は年齢とともに減ってくる。」と、岡空肛門科(吹田市)の岡空達夫・院長。キレ痔になるにはある程度、肛門の筋肉のはりが必要なのだそうだ。 また、キレ痔の場合、必ず痛みを伴うのが特徴だ。ただ、最初のうちは排便時に少量の出血と痛みがある程度だ。この段階で適切な治療をすればすぐに治るが、治療が遅れたり、便秘状態が続いて何度も再発させたりすると、傷の部分がかいよう化してしまう。痔の中で最も痛いという肛門かいようと呼ばれる状態だ。排便以外にも長時間痛みが続き、手術が必要だ。キレ痔の人はお尻を清潔にしていないと、痔ろうにもなりかねない。  とにかく、便秘をしないように心がけ、薬なども使っで慢性化させないようにすることが大切だ。

(平成8年5月8日)

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治療がやっかいな痔ろう
痔(じ)の中でも治療がやっかいなのは、痔ろうだ。これは肛門(こうもん)周辺の皮膚に穴が開いて、肛門と直腸の境界部との間にいつまでも治らないトンネル(ろう管)が残ってしまうものだ。中にうみがたまり、痛みが出てくる。 ただ、いきなりこんな状態になるのではない。その前段階に肛門周囲膿瘍(のうよう)という病気が起こる。これは肛門と直腸の境界部にある肛門小窩(しょうか)というくぼみ部分から、大腸菌などが感染し、周辺の筋肉内に入り込んでいる肛門腺(せん)に炎症や化膿(かのう)を起こす。発熱する場合もある。この膿瘍が肛門側にはれ上がって破れて膿が出ると、熱や痛みも消えるが、その後に管が残る。これが痔ろうだ。場所的に、さらにまた感染、化膿を繰り返しやすく、放置しておくと、管の枝も広がって複雑化し、どんどん治りにくくなってしまう。 イボ痔やキレ痔の場合は軽い時期には薬で治療することもできるが、痔ろうの場合は、「手術をしないと治らない」と、大阪肛門疾患研究会世話人の奥田博・八尾市立病院長(外科)。「他の痔と違って 、痔ろうは、長く放置しておくと、がん化する危険性があり、手術も難しくなる」と、早めの手術を勧めている。

(平成8年5月13日)

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痔ろうの手術は早い方がいい?
痔(じ)ろうの手術はなるべく早く受けた方がよいそうだが、患者にしてみると、手術後、排便などに支障はないのか、ということが気になる。確かに以前は、痔ろうの「ろう管」の周辺を大きく切開する開放術式と呼ばれる手術が中心だったため、「手術によって肛門(こうもん)の括約(かつやく)筋が傷つくなどして肛門が変形し、しまりが悪くなり、手術後、便がもれやすくなるような例もよく見られた」と、奥田博・八尾市立病院長(外科)。 しかし、十年ほど前から、痔ろうが大きい場合でも、括約筋内にあるろう管には手を付けないようにしたり、体の別の部分の筋肉の一部を埋め込んだりして、肛門の括約筋の機能を残す手術法が普及。括約筋の機能を損なわないように、各施設で細かな手術法の工夫も進み、手術後の肛門の変形が減って、入院期間も短くて済むようになってきたという。 ただ、治療が遅れた複雑な痔ろうでは、手慣れた専門医に手術を受けないと、再発しやすくなるともされる。手術は健康保険の適用になっているが、手術法に工夫をこらすなどしている肛門科の単 科医院などでは保険が利かない「自由診療」をしているところもある。この点は他の診療科に比べ特殊なので、注意が必要だ。

(平成8年5月14日)

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生活習慣の見直しで再発の防止を!
痔(じ)の治療は進んできたとはいえ、一度痔になった人は、ふだんの生活を見直さないと、再発の可能性は残る。中でも代表的なのは、便秘をしないことだ。便秘をすると、硬くなった便をいきんで出すことになる。繰り返すと、イボ痔やキレ痔を引き起こしやすい。「この悪循環を絶つことが、一番大事なこと」と、奥田博・八尾市立病院長(外科)。「繊維性の食物を多くとったり、朝起きがけに水や牛乳を飲んだりなど、便秘にならないようにする方法はその人その人で違うが、できるだけ便を我慢しないで」という。 一方、下痢も長引くと、肛門(こうもん)に負担がかかるので、要注意。トイレタイムをできるだけ短くするよう心掛けることがいきまないことにもつながる。肛門の周辺をいつもきれいに保つことも重要だ。排便後のお風呂は、肛門周辺の血行もよくする。手っ取り早いのは、おしり洗浄器付きのトイレの利用。最近は携帯用も市販されているのでうまく活用しよう。お酒や辛い食べ物なども、余り神経質になる必要はないが、度を超さないのが予防法だ。 また、「痔主」が 注意すべきなのは、便に血が混じった場合だ。大腸がんを見逃しかねないので「痔の出血」と勝手に思わず、専門医に相談を。

(平成8年5月15日)
(本多 昭彦)

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