★「はじまりゆく日々」 〜 いま、予感のなかで 〜 【ベルダイン】夜の旧市街 Ver 0.8 情景1__ 繁華街の夜。 盗賊ギルドのしきる、妖艶なる酒場。 (うわばみ) 首元をなめるようにして まとわりつく、大蛇のような空気。 わずかながらの"蒸し暑さ"を、俺は感じとる。 だが、視線は そらさない。踊り子たちの ゆれる肢体に釘付けなのだ。 間近に見る その艶っぽい動き。そして、匂いたつような柔肌。 いましがた飲み込んだ "琥珀色の液体"とともに、脳髄まで染みわたる光景。 そう。まるで失われていた血液のように……。 俺は、その状況を貪欲にむさぼっていた。 嬌声をはりあげる踊り子と、すかさず沸きあがる歓声。 さらに舞台脇から、人の"色情"をあおるメロディーが 奏でられる。 香が焚かれ、"薄紅色の煙"にかすむ場内。 全てが一つとなり、"妖かしの夜" をかたどっていく…。 (……この酒場。「魔力を帯びた」そんな雰囲気だ) 多くの客が、騒ぎたてている。競ってる訳ではないのに。 己の感情を、さらけ出してくる。神に許しをこうように。 どんな欲望も、どんな悩みでも。すべてが飲み込まれていく。 心も身体も、無防備になる。 服を脱ぎさるように。 自分の寝床に、もぐりこむように。 誰もが、すすんで身をまかせるのだ。 (……うまく言い表せない。酒がまわってきたのか?) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 情景2__ 乞食と、ベルダイン港湾区域。(朝の5時) 夢、うつつ。 何かの音が耳に入ってくる。……ザワザワ…… その規則性をもったリズムは、この路地裏へ伝わっていた。 ここは、薄汚れた倉庫街。人の気配は、ほとんどない。 繰り返される かすかな音は、ひかえ目だが 確かに聞こえる。 そして、耳元に "ある響き"を残していく。 旧市街には、浜辺がない。 寄港した船は、すべて岸壁につながれていた。 波もある。しかし、チャポチャポと岸壁に触れるのみ。 それ故か、音に気づく者は あまりにも少ない。 甘美とはお世辞にもいえない。 うらぶれた倉庫たちに囲まれ、男は かくもささやかに惰眠を求めていた。 その風貌をかたるには 異彩を放ちすぎ、常識にてらすことも無駄に思われた。 出生地はおろか、年齢すらも言い当てられないだろう。 そして、冷ややかなる潮風は 日の射し込みを待たずして、 夜の残像を 幻のように消し去ろうとする。 (いざな) 郊外へとつづく街道は、たれこめた湿り気を 大地へと誘う。 こうした 大自然のいとなみは、寡黙な”精霊たち”の働きを示していた。 酒場や色町は、その魔力から…… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 情景3__ ベルダイン郊外。(朝の6時) あと少し時を刻めば、早起きな商人たちが目をさます。 給仕たちは 火を起こし、食事の支度をはじめるだろう。 休んでいた鳥たちは、一斉に "刻"を告げる。 そして、月はその姿を隠す。いくばくかの憂いを残しながら。 この大地と あの星界が、"世界"の 理を伝えているのだ。 (フォーセリア) 朝の情景。希望に満ちあるれる時。 いつしかそれは、ありふれた日常に 明け渡されていく……。 荷馬車。 農作物や乳など積んだそれは、近郊の村々からやってくる。 川の流れがつづくように、押し寄せてくる。