シェフのひとりごと(11)

シェフのひとり言(13)

久しぶりにこのコーナーを再開します。実は別のテーマで書いていたのですが,緊急にこの稿を先行することにしました。なぜなら今年(2000年)は日本のスペイン料理界にとって,大げさに言えば,画期的な年となるかもしれないからです。待望のハモンセラーノ(生ハム)がやっと輸入解禁になったのです。「なあんだー」とおっしゃる向きもおられるでしょう。しかし、これは我々スペイン料理に携わるものにとっては重大な事件といえるでしょう。
スペイン料理には絶対に欠かす事の出来ないこの食材は、世界最高の生ハムといわれながら、不思議なことに今まで輸入出来なかったのです。
ハモンセラーノの製法や特徴などに付いては,雑誌や書物によく取り上げられていますので,ここでは省略しますが、これが他の生ハムとはまったく異次元の又よく似ているといわれるイタリアのプロシュートとも一線を画す、美味なものだという事はいくらでも強調しておいて言いと思います。
ところで,当然ながら私どもを含め日本のスペイン料理店で扱っているハモンセラーノは日本製なのですが,生産者の努力と熱心な研究のおかげで、これら日本産ハモンセラーノはスペイン産のハモンの通常品に勝るとも劣らない品質であることも申し上げておきましょう。
じゃあなぜそんな大騒ぎをするのかと聞かれるかも知れません。それは輸入解禁によってあの、俗にパタネグラと呼ばれるハモン・イベリコが手に入る可能性が現実のものとなったからです。ハモン・イベリコはハモンセラーノの中でも特別な存在で、スペインにしかいないイベリア種の豚(セルド・イベリコ)をペジョータというどんぐりの一種を食べさせる独特の方法で飼育したものを使い、2年以上かけて熟成させて作るものです。
このハモン・イベリコの味わいを表現するのは私には不可能なのですが,一度食べれば忘れられないーーーその他のハムの存在など消し飛んでしまうーーーほどのものなのです。
問題はこれが生産量も少なく高価な事なのです。私どもの目下の関心事はこの当たりにあるわけですが,もし、いい状態のハモン・イベリコが手に入るなら,(その値段にはとりあえず目をつぶって)一度食べてみてほしいのです。
スペイン料理といえばほとんどの日本人はパエリャと等記号で結ばれているだけの認識なのですが,これがその認識を変える大きなきっかけになれば良いと思うのです。
先日ある百貨店にスペイン産ハモンセラーノが(通常品ですが)すでに売られていて,びっくりして少し買い求めてみました。結果は残念、日にちが経っているのか骨抜き加工のせいなのかがっくり来てしまいました。まあ一般に売り出されたというだけでも一歩前進というべきかも知れません。


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