シェフのひとりごと(2)
シェフのひとりごと(2)
 歴史というものがその国を造っていくと言っても大げさではないと思いますが、料理にもその国の歴史が大いに影響を及ぼしています。
 スペインはいまでこそ一つの国ですが、かっては多くの国(したがって多くの言語と民族)で成り立っていました。いまは地方として位置づけられているカタルーニャ、カスティ−リャ、アストゥリアス、バスク(他にもあります)も、それぞれ独立した国でした。日本にスペイン料理として紹介されているものも、すべていずれかの地方のものなのです。例えば、有名なパエリャはバレンシア地方のものですし、子豚や子羊のロースト(スペイン語でアサード)はカスティーリャ地方の、いかの墨煮はバスク地方の、スペイン風のブイヤベースともいえるサルスエラはカタルーニャ地方のものです。
いずれもその地方の食材から生まれて来た料理で、その個性は風土と分かちがたく結びついており、それが料理の個性ともなっています。
 こうして見ていくと、スペインには全国区の料理というのはほぼ存在しなくて、それぞれの地方の料理しかないのです。そういう意味でスペイン料理というものは存在しない、ということも出来ます。
 スペインの料理書をひもといてみますと、確かに多くのものが地方別の編集になっています。このことは私どもがスペイン料理を研究する上で非常に大切なことなのですが、また、料理をいただく時もその事を知っていればより食の楽しみが大きくなるだろうとおもいます。
 日本ではまだまだスペイン料理店が少なく、スペイン料理そのものを紹介しなければなりませんので、多くの店(私どもを含め)でスペイン各地の料理をまとめてメニューにのせているようです。ちなみに私どもでは、カタルーニャ地方の料理を中心に、各地の代表的な料理を紹介するという構成をとっています。なおカタルーニャ地方というのは、スペイン北東部の地中海に面した地方で、国境を越えてフランスにも広がりをもちます。バルセロナがその州都です。カタルーニャは食材面で南フランス・南イタリアと共通したものが多く、料理も似通ったところがあります。ナッツの香ばしさやドライフルーツの自然の甘味を生かした調理法に特徴があります。
 この次には、カタルーニャ地の料理を中心にお話してみたいと思います。