![]() シェフのひとりごと(6) 今回はスペインの真ん中、カスティーリャ地方のことを書いてみます。 カスティーリャは首都マドリッド(スペイン語ではマドリーといいます)を中心とした地域で、標高が高く地理的にメセタ(中央高地)と呼ばれます。現在はその北半分が北接するレオン州とともに、カスティーリャ=レオンと、南半分は南接するラ・マンチャ州とともに、カスティーリャ=ラ・マンチャと区分されます。 スペインに旅行された方はお気付きになったとおもいますが、例えばマドリーからトレドに観光に行く場合、バスか車にお乗りになったと思います。その時車窓から見える風景が砂漠のように荒涼としているのに驚かれたはずです。実はこれがカスティーリャの典型的な風景なのです。つまり雨が少なく、したがって森林が少ない、牧畜の地方なのです。カスティーリャの食はずばり肉です。 肉というと日本では一も二もなくとにかく牛肉。でもスペインではちがいます。まず子羊、子豚、そして子牛です。 有名な「ドン・キホーテ」の最初の部分に、貧乏郷士のキホーテのふだんの食事が羊肉より牛肉が多い煮物であるというような描写があります。つまり、羊を買うお金がないから牛肉を食べてるのです。おもしろいですね、しかもこれは現代のスペインでも同じなのです。なんだか、日本人の常識はスペインの非常識みたいですね。日本では羊はにおいが強いととかく敬遠されがちですが、適切な調理法で料理されたものは実にうまいものです。スペインの羊のうまさは筆舌に尽くしがたいのです。 さて、さらに印象的なのはカスティーリャの子豚です。子羊もそうですが、子豚もアサードという料理が一般的です。これは要するにローストなのですが表面はカリッと、しかし中はジューシーに仕上げます。 マドリーのマヨール広場の近くクチジェロス通りに、ボティンという古いレストランがあります。ここは子豚のアサードで有名な店ですが、アーネスト・ヘミングウェイが「日はまた昇る」のラスト近くで主人公に「世界一おいしいレストラン」と言わせたために、今なおアメリカ人観光客がおしかける店です。繁盛しすぎると味が落ちる、などとよくいわれますが、スペインではそういうことがあまりないのがうれしいですね。 子豚のアサードではもう一軒、セゴビアのローマ時代の水道橋のたもとにある、メソン・デ・カンディードも老舗です。ここは、焼き上がった子豚を、いかに柔らかい肉か見せるために、皿を使って切りわけるパフォーマンスでも有名です。 私事ですが、ここで水道橋を眺めながら家族一緒に食事したことがあります。いい思い出なのですが、その時子豚と一緒に食べた「きのこのセゴビア風」と「ピーマンのフリトス」の単純、素朴な味が忘れられません。 ところでこの場をお借りして、ちょっとお知らせをいたします。 実はいままで当店では、お客様からサービス料をいただいていたのですが、色々考えた末この9月末よりサービス料をいただかないことにいたしました。といいましても今後サービスをしないと言うのではなく、お客様が本当に望んでいるサービスはなにかをもう一度考えなおそうと思っているのです。
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