![]() シェフのひとりごと(8) しばらく前から、ワインをテーマにと思っていたのですが、なにしろ広く深い世界ですから、ちょっとやそっとではすまなくなってしまう。第一、私はソムリエではありませんから、ワインの専門知識が十分とはいえない。 しかもわが愛するスペインで産出するワインには、特別の思いがありますので、これは逆にある種の独善ともなる。 さて、そうはいっても『うまけりゃいい』派ですので、基本的に産地、ブランドにこだわりはありません(ややこしいワイン名を覚えられないだけ、との声もある)その意味では昨今のワインブームは実に楽しくって、なにしろひと昔前なら考えられなかったような様々なワインが、比較的手軽な値段で楽しめるようになったのですから。 『でも』と、私のなかのスペイン狂の魂が言います。『スペインのワインはどうしたんだ?これだけワインがブームだとゆうのに、紹介も輸入も一向にされないのではないか?』 そういえばそのとうりです。かつてはドイツワイン、そしてバブル期にはフランスワインが掘り尽くされ、ついでイタリア料理ブームとともにイタリアワインが掘り尽くされ、今は南半球のワインがブームだそうな。おいおい、ちょっと待てよ、フランス・イタリアの次がなんでチリやオーストラリアなんだ?世界第三位のワイン産出国スペインはどこにいったんだ?ものには順序ってものがあるだろ? 私もチリやオーストラリアのワインを飲んでみたことがあります。確かに値段の割にうまいものもある。でもなんだか変だぞ。チリワインの特徴ってどこにあるんだろう。これじゃまるでフランスワインじゃないか。そう、私の推測と編見によれば、フランスの高級ワインは高くなりすぎて、なかなか買えない。だからフランスの高級ワインのような味のするチリワインが、普段使いと称してかわれているんじゃないか。 もしそうだとすれば、これはなによりチリワインにとって不幸なことです。生産者たちが懸命な努力でぶどうを育て醸造した結果が、フランスワインの安い代替品と思われているのであれば。目先の変わったものの好きな日本人に流行らせようと、誰かが仕掛けてるのでは、と勘繰りたくもなります。 ワインというものは、ぶどうの種類や醸造はもとより、あらゆる農場と同じように自然条件の恐ろしく複雑な組み合わせと、そして地の人々の努力と工夫によって、その持ち味がきまるはずです。だから、もちろん生産国によって独特のものが、荒っぽク言えば、フランスワインにはフランスワインの、チリワインにはチリワインの独特のの味わいがあるはずです。あえて独断と偏見で言えば、どうも今のワインブームには高級フランスワインの味を唯一最上と考え、それを物差にして騒いでるような気がします。 誤解のないように言っておきますが、私はフランスワインのすばらしさ、本当に『偉大な』という言葉で賛美されるワインがあることもわかってるつもりです。でもそのようなワインだけが価値があるのではない。様々な産地の様々なワインの、その個性を楽しむというがあってもいいのではないか、と思います。 さて、話をスペインワインにもどしましょう。 かつて日本のワインメーカーは、スペイン産の安ワインを大量に樽買いし、それをブレンドして自社ブランドのワインとして売っていました。だから、スペインワイン=安物のイメージがかえって専門家の方にあり、したがって一般の消費者には何のインフォメーションも与えられないまま来てしまったのではないかと、これは私の推測です。 ようするに、スペインワインのことなど誰も知らない。知らないから売れないし、売れないから輸入しないと(どちらが鶏か卵かわかりませんが)いうわけです。 またEU統合が進めば、今は比較的安価なスペインワインも価格上昇の可能性もあり、ならばよりコストパフォーマンスのよい南半球のワインを、というビジネス上の思惑も在るかもしれません。実際、本当に高品質のスペインワインはそのイメージほど安価ではありません。 しかし一方で、自分の足で本当においしいスペインワインを見つけようとしている輸入業者や、スペインワインの価値を理解している酒販店が増えつつあるようです。また、旅行でスペインワインの醍醐味を発見した人も増えてます。 ほんのわずかずつですが、世の中がスペインワインを認識する方向に動いているとは感じています。そうなるまでには膨大な時間がかかるでしょうけども。 |