シェフのひとりごと(9)

シェフのひとり言(9)

 仕事にかまけているうちに、前回から随分時間がたってしまいました。ワインの話の続きをするつもりなのですが、どうもここのところ、ワインをとりまく情勢が急激に変化しているようなのです。
 第一は今急激に赤ワインがブームになっていること。ほんの数カ月前まてあれだけ売れなかった赤ワインなのに、今は赤ワインしか売れません。どうして日本人の作るブームというのはこんな「殺到」型なんでしょう。赤ワインには赤の白には白の持ち味があるのですから、もっと日常的に、つまらぬウンチクやはしゃぎすぎの健康意識ぬきに、単に食事どきの飲み物として楽しめばいいと思うのですが・・・。とにかくこんなタイプのフームの後には必ず急激な衰退が待ち構えているものです。そうならずにワインが定着する方向に進めばいいのですが。
 第二にあちこちでスペインワインの実力が認譲されだしたことです。某雑誌の企画で、数人のソムリエが3000円以下の各国のワイン200本をテイストしたところ、第一位に選ばれたのはスペインワインでした。その記事の執筆者は予想外の結果に驚いだというような感想をもらしでおりましたが、私などこんなことで驚きはしません。むしろ日本に輸入されているスペインワインは数えきれないほど膨大な銘柄のごく一部でしかないことを知っていますから、まだまだなんだ、という気持ちが強いのです。
 さて、スペインワインです。この膨大な世界を数行で紹介することなどできはしませんので、詳しくはカタルーニャの大醸造家ミゲル・トーレスの本(邦題:ときめきスペインワイン)をお読み下さい。決して意を十分尽くした本とはいえないのですが、まとまって読める日本語の入門書はこれぐらいしかないのです。
 ここでは二つのことをご紹介しておきます。スペインワインを飲んでみたいけど、なにを選んでいいのかよくわからない、とおっしゃるむきには目安にはなると思います。
 一つは原産地呼称制度です。これはフランスやイタリアにもある、特に優れたワイン産地の指定制度です。これをデノミナシオン・デ・オリヘン(Denominacion de 0rigen 略して D0)といいます。したがってワインボトルのラベルにこの横文字が表記されていれば、その生産地での基準をクリアしているということです。ちなみにリオバ地域だけは、デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダという特選呼称に指定されています。
 もう一つは熟成でのカテゴリーです。スペインワインは熟成がひとつのポイントですから、D0と同様にこの定義付けも法的にきめられています。熟成期間の短いものから説明しますと、
 クリアンサ(Crianza)樽熟6カ月以上、瓶熟1年半以上、合計2年以上の熟成。〕
 レセルバ(Reserva)樽塾l年以上、瓶塾2年以上、合計3年以上の熟成。
 グラン・レセルバ(gran reserva)樽熟2年以上、瓶塾3年以上、合計5年以上の熟成。
と、簡単にいうと以上のようになります。
以上の二つを覚えておくと、ワインを選ぶときの目安にはなると思います。
 ただし間違えてはいけないのは、これ.はそのワインのおいしさの表示ではないということです。熟成のカテゴリーと味の評調とはしばしぱ逆行することもありますし、最近はやりのヴァラエタルワインはDOの使用ぶどう品種基準にあてはまらないために、どんなに品質がよくてもDO指定外になってしまうということもあるわけです。
 ですから結局はご自分で飲んで、しかも科理と合わせて楽しんでみるしかないわけで、やれうまいのまずいのと評論家になってしまうと楽しくないと思いますね。


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