【何を称してスペイン料理というか?】
よその国の料理を理解する、というのは大変なことでして、私などもう15年以上も研究し続けているのですが、相変わらず奥が見えない。
「こんなところか」と思った次の瞬間、その奥に見知らぬものがある。こんなことの連続です。「そりゃ、お前の理解力が悪いんだろう」といわれればそれまでなのですが、とにかく勉強することはいくらでもある。
ところで昨今のスペインバルブーム、店が増えるのは結構なのですが、どうもバルの料理イコールスペイン料理と思われている節もないではない。バルといっても本当に玉石なんとかで、正しいスペイン料理のタパスを出している店があるかと思うと、パルマのプロシュートにカルパッチョ、パスタにリゾット・・・・・とまあ、自称スペインバルのイタリアンバールが山ほど存在する。(いつも言ってることですがスペインバールといわないでください。BARはスペイン語ではバルです。)
こんな風に一般のレベルでわけがわからなくなりつつあるのに加えて、スペインのアバンギャルドな料理テクニックが紹介されるに及んで、
サイフォンで食材に空気を吹き込んだり、アルギン酸で偽イクラを作ったり、液体窒素で瞬間冷却したりするのがスペイン料理の技法だと思い込んでいるプロ料理人がいる。
こうした技法を発明したたとえばフェラン・アドリアのような料理人たちは、自分たちの料理をスペイン料理とは呼ばず、自分の料理だといっているにもかかわらずなのです。
「○○国の料理」とは当の国の風土、文化、歴史や伝統を踏まえた上で成立するものであることは常識的に考えて間違いではないはずです。でも現実にスペイン発の新技法をとりいれたイタリア料理の店をスペイン料理とジャンル分けするグルメ雑誌などが出てきますといったいそのジャンル分けとは何のためかと思うのです。
スペインのタパス風に料理を提供するイタリア料理店が店名をスペイン語にして、スペイン料理店と称する。イベリコ豚を使っているというだけで、スペイン料理を取り入れていると称する。こんな例は嫌気がさすほどたくさんあります。
一番問題なのは、スペイン料理を知らないお客様がこの手の歌い文句にだまされてしまうことです。私は決して料理純粋主義者ではありませんが、自分の料理が何を立脚点にしているかよく考えてほしい。売れるから、流行だから、というだけで適当な売り文句を唱えるのはやめて欲しい。
そうは言ってもそんないい加減な店はあとを絶たないし、こんな店ほどお客様を集めるのが世の中の常なのですが。
それが何国料理か、というのは本来かなり難しいことなのです。そして大事なことなのです。このことを軽く考えてはいけない。軽く考えれば考えるほど、当人の無知と不勉強をさらけ出すことになります。このことはまた機会を改めて、別の角度からも考えてみることにします。