オリーブオイルの真相 その2
オリーブオイルが他の油と大きく区別できるところはなにか?それはコールドプレスではないか、と私は考えています。コールドプレスとは原料から搾油するのに、加熱することをせず単に圧搾して油を得ることを言います。というと大げさに聞こえますが、オリーブオイルの例でいいますとオリーブの実を圧搾機にかけて押しつぶし油を搾るのです。
実はこれは最も原始的な搾油法で数千年も前からオリーブオイルはこの方法で作られてきました。そして現在でもオリーブオイルはこの方法で作らないといけない、と国際的に決められているのです。では他のオイルはどうして作るのか?もうお分かりと思いますが「加熱」がポイントです。原料に溶剤を入れて液状に溶かしその後加熱して溶剤を取り除き遠心分離機で油分を取り出します。この方法だとほぼ100%の油分が搾油できます。
経済効率はいいのですが、加熱によって油は変化を受けないのか?溶剤は100%除去できるのか?――― 油はこの後何度もフィルターにかけられ精製されます。出来上がった油は味もにおいもなく単に「食用油」というべきものができます。当然上級品や下級品もなく、みんな一律の品質です。オリーブオイルとゴマ油を別にすれば、スーパーの棚に並んでいるのはどれを買っても同じようなものなのは、その製法に由来するのです。
以上のことを考えるとオリーブオイルは他の大工場性の「食用油」とは全く価値観の異なるもので、同じ油としてあつかってはいけないかもしれません。
衆知のようにオリーブオイルには搾油の順によってエクストラバージンオイルとピュアオイルがあります。エクストラバージンオイルは一番搾り、二番以降はピュアとなるのです。そもそも圧搾しただけのものですから、オリーブの実の微細片が混じります。通常はフィルターにかけて、これを取り除くのですが(ここが面白いところなのですが)、最上級のエクストラバージンオイルはフィルターをかけないものが多いのです。オイルに混じる細かいゴミのようなものは、オリーブの実(果肉)です。ですから、これを取り除くとオイルはきれいになりますが、風味が落ちてしまうのです。上質のオリーブオイルほど人間が手を加えない、これは通常の「食用油」とは正反対の価値です。この「人間が余分な手を加えない」という点が大切なところで、オリーブオイルが最も自然に近く健康と言われるゆえんです。
日本人にとっては油は単に食材の一つにすぎません。つまり炒めたり揚げたりする為の手段にすぎず、油は新鮮さが問題で、味はあまり意識に上りません。しかし太古からオリーブオイルを使ってきた人にとっては単に炒めたり揚げたりするためだけのものではありません。味の決め手になる大切な食材なのです。ゴマ油はこれに似た立場のものです。また、醤油の役割までしていると言えるでしょう。日本人の料理から醤油が欠かせないようにスペイン、イタリアをはじめとするオリーブオイルを使う国々の料理からオリーブ果汁は欠かせないものなのです。
油分のカロリーは誰しも気にするのですが、その質については気にする人は多くないはずです。どうせ油を使うのなら、できるだけいい油を使いたいものです。つまらない油をやめてオリーブオイルにするだけで料理の味がころりとかわること請け合いです。
さて、最後に一言、かつて(十数年も前)私どもの店でパンにオリーブオイルを添えて出すとバターをくれと言われたり、うす気味悪がられたりしたものです。今では隔世の感と言いますか、パンにオリーブオイルは当たり前になってしまいました。しかし、中にはオリーブオイルに塩や胡椒をたくさん振り込んでパンに付けられる方がおられます。これはもう10年以上前にアメリカのイタリア料理店で始まった食べ方だと思われます。
オリーブオイルの質が良くなければ、これも一つの方法でしょうが、私どもの店ではパン用に最上級のエクストラバージンオイルをお出ししています。なぜなら、パンに付けるとオイルの味は一番良くわかるからです。従って、塩や胡椒を大量に振り込みますとオリーブオイルの味は台無しになります。上質オリーブオイルの味や香りをもっと楽しんでいただきたいと思っています。