【スペイン料理はイタリア料理か??】

*****************************************************

まぐまぐを長らくお休みして申し訳ありませんでした。
店の移転などがありしばらく休んでしまいました。それでなくても間隔の長いメルマガです。我慢して読んでいただける方がいらっしゃれば、幸いです。

*****************************************************

長い間スペイン料理をやっていますと不思議に感じることがいくつもあります。その最たるものは、どうも世間ではスペイン料理とイタリア料理は同じようなものだ、と思われている節があることです。

昔から今に至るまで、あらゆる(まじめな)スペイン料理店を悩ますお客様からの問いは、「パスタはないのか?」「ピザはやってないのか?」です。パスタに関しては、あまりに問い合わせが多いのでついに誘惑に負けて(?)メニューに取り入れているスペイン料理店もあります。ここ最近は上の二つの問いに加えて、「カルパッチョはないのか」が登場して来るようになりました。

なぜ、スペイン料理はイタリア料理お同じと思われているのでしょう?

以前にも書いたように、スペイン料理はイタリア料理よりもフランスの南西部の地方料理とはるかに近親性が高いのに。しかしフランス料理店へ行って「パスタを出せ」というお客様はあまりいないでしょう。そしてこのことは私どもが店を開店した15年前には既にそうであったのです。ですから私どもにも本当の理由はさっぱりわかりません。

たぶん、(これは本当に「たぶん」ですが、)ごく一般的にラテン三国といえば、フランス、イタリア、そしてスペイン、そのうちフランスは別格で、飛びぬけていて、イタリア、スペインは十把(いや二把)ひとからげ、そのうちイタリア料理の人気がポピュラーになると、スペインは「ひとからげ」のうちですから、同じものと解釈してしまう、とまあ大ざっぱに言えばそんな事なのでしょうか。何しろ、存在感が薄く情報量の少ない物事は「ひとがらげ」にされてしまうものです。

このことはレストランの経営側にも言えるようでありまして、スペインレストランにはイタリア料理出身者が結構多い。これはなぜかというと基本的に今でもなお、スペイン専門の料理人が極度に少ない。フレンチの料理人はプライドの高い人が多くて他国のましてスペインなどという未開の国の)料理など鼻にもかけない、で、イタリア料理なら似ているから出来るだろうと思う、または思われる。ここで西・伊が似ているといきなり論理の三段跳びをかましてしまうのが、また訳がわかりません。

とにかく、まあそういうわけで、イタリア料理出身のスペイン料理人が結構存在するわけで、でもちゃんとスペイン料理を研究して提供してくれるならいいのですが、(実際そういう人もたくさんいるとは思います)中にはよく研究もしないで、誰かが書いたレシピだけ読んで(またスペイン料理のレシピというのは妙に簡単なものが多いのです、それだけにちゃんと作るのは難しいのです。)「ああ、こんなの簡単だ」となめてかかる。だから本当においしいものができない。

研究していないから、すぐにネタがつきる。勢い店のメニューはパスタ、ピザ、リゾット、カルパッチョのオンパレードになる。スペイン語も勉強していないから、ポストレ(デザート)はドルチェと書く。フリトス(揚げもの)はフリットと書く、スペイン産のハモン(生ハム)は高価で取り扱いが難しいから、イタリア産のプロシュートにたよる・・・・・・と、まあわけのわからないことになってゆくのです。

スペインバルやスペインレストランと称するところで、あまりにイタリアのにおいがしてきたら要注意というわけです。で、この様な店が増加しますと(また、この手の店はよくはやっているのが現実ですが)スペインにもパスタやカルパッチョがあるのだと思い込むお客様がますます増加し、冒頭にあげたような問い合わせがますます増加する。

普通に考えれば、スペイン料理店が増えれば、スペイン料理に対する見識は高まると思うのですが、実は高まるどころか、混乱しつつあると思うのです。

さて、この『諸外国は十把ひとからげ意識』はわれわれ日本人が持っている特徴なのではないか、と思うときがあります。以前「地中海料理」というひとからげジャンルが流行したことがあります。でもその正体はほとんどがイタリア料理と、南仏料理で、ギリシャとスペインが少々というものでした。アドリア海沿岸のトルコ、エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど、地中海の東部と南部は忘れられたまま、要は自分たちの知っている、伊、仏料理を口当たりのよい、キャッチフレーズでまとめただけのものだったのです。(ついでに言うと、地中海料理として紹介されたスペイン料理の中には中・北部スペインのもので、地中海とは縁もゆかりもないものもあったようです。

このような、「十把ひとからげ」が、物事の理解を深めるどころか、実は誤解を生む原因になっているといってもいいのではないでしょうか。いやそれどころか、それぞれの国の人々のアイデンティティを傷つけることにもなりはしないか。

知らなければ、知る努力をしないといけない、わからないのにしたり顔をしてはいけないーーーーーこれは料理の世界でも同じことなのです。