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より安心して住まう為に                


千葉県の建築士による構造計算偽装事件で建築基準法そのものに対する不信感が広まっています。
それは、マンションだけに止まらず一般住宅にで及んでいます。現在の殆どの建築士の発想は、自分達の仕事の根拠になる建築基準法に対し順法であれば、責務を果したと考えています。ある意味当然なことです。
しかし、今回の故意による偽装や、過失による、計算間違いがあった場合、基準法に満足しているだけでは、たちどころに適法かどうか怪しくなるのも事実です。
また建築基準法自身が、この法律を満たしていれば、どの様な災害にも耐え得る事を証明しているものではありません。法律通りに建てて、これでも倒壊するならば施工者に責任が及ばない、程度の基準です。

建築基準法の構造基準は、過去に日本で発生した災害の最も酷いものを根拠にして成り立っています。地震であれば関東大震災、台風であれば伊勢湾台風が法律の根拠です。但し、日本全国で同じ法律を当てはめる為(地域によって係数の変化はありますが、根拠は同じです)その土地で果たして本当にこれで
満足かは不明のままです。

過去の経験を基に予想しうる外力を可能な限り想定しながら、法律以上の耐震性・耐風性を持たせようと考えるのが本来の建築士の姿勢だと考えます。

今回は、緊急特集として、建築基準法と住宅性能表示制度の比較をしながらどうすれば、バランス良く堅牢な建物が造れるかを、判り易く具体的に説明して行きたいと考えています。   



H17.12.07
構造力学では、建物にかかる外部からの力を、主に縦からの力と横からの力に分けます。縦にかかる力は、建物の中の家財道具や人の体重等(積載加重)と建物自身の自重(固定加重)からなります。雪国に行きますと積雪加重も考慮されます。

それに対し、横向きにかかる力は地震と風が代表で、建物を横向きに押します。その為水平荷重と呼ばれます。対語として縦向きの力は垂直荷重と呼ばれます。

地震とか風は常時建物に作用する訳では無いので短期荷重とも呼ばれます。垂直荷重は常時作用していますので、長期荷重と呼ばれます。短期荷重は一時的な力ですので、建物に及ぼす影響が少ないとの考えから建物の外部からの力に抵抗する力(耐力)を長期の1.5倍見て良い事になっています。
そこで、今問題になっている耐震性に関して、建築基準法ではどの様な考え方で、安全を確認して行くのか、又住宅性能表示では、どの様な事を補足して、検討する様になっているかを検証して行きます。



H17.12.11
在来木造住宅についてですが、横から加わる力(水平荷重=地震力や風圧力)に対して、壁の多さで抵抗させようとします。この壁の事を耐力壁と云い、筋交いや構造用合板を土台から柱の上の横架材(梁)まで張り上げた壁を云います。
建築基準法では、この耐力壁が建物に対しどれぐらいの壁が入っているかを検討します。又耐力壁には壁の作り方によって0.5から5.0までの倍率が定められてあり、例えば倍率2.0の壁は、倍率1.0の壁の2倍の壁長があると見なされます。
その耐力壁が地震力・風圧力に対して充分満たされているかを検討します。
地震力は床面積に比例します。床面積が広ければ広いだけ大きな地震力を受けます。
床面積に経験に基づいた係数を掛けたものを必要壁量と云い、耐力壁に倍率を掛け合わせたものと所要壁量と云います。

所要壁量と必要壁量を比較して、所要壁量が必要壁量を上回っている事を確認します。

必要壁量 < 所要壁量

を確認する。


風圧力については、建物の床面積でなく建物の壁面積に係数を掛けて必要壁量を算出します。
建物の形は東西方向・南北方向で見付け面積が違うのが当然ですから、ニ方向について見当します。

それを地震と同じ様に所要壁量が必要壁量を上回っているかを確認します。
建築基準法では壁量の量だけに留まらず、バランスの良い配置で耐力壁が設けられているかも検討します。例えば、都市住宅に良く見受けられる間口2.5間の家の場合、1間の玄関と横にガレージが建物の中に入り込んでいる住宅等は、正面間口側に耐力壁を入れる余裕がありません。

これでは、地震が来た際に前がグラグラで奥が硬い家になってしまい偏った揺れ方をしてしまいます。鞭が撓る様な揺れ方は非常に危険で建物を倒壊させてしまう事もあります。

これ等の不具合を未然に防ぐ為、平面的に建物を4分割し外周の1/4の部分にどれだけ耐力壁があるかを確認します。外周部の両側の耐力壁の割合が、一方が一方の倍にならない様に配置する事を義務付けています。

建築基準法では、ここまでの検討をして、建物の安全を確保したと云っているのです。果たしてこれで安全であると言い切れるのでしょうか?

H17,12,24


二階建て木造住宅に関してですが、建築基準法では、基礎について何の申請義務も無い事は前回お話ししました。
それに比べ、住宅性能表示制度では、以下の項目の提出義務を負います。
(等級2・3のみ)

1、地盤の支持耐力の確認
2、基礎の接地圧強度の検討
3、地中梁の検討
4、引抜金物の検討

1、地盤の支持耐力

これは、地盤調査を行い、その地盤が建物の荷重に耐えられるかを確認します。
国土交通省告示1347号により地耐力が20kN/m2未満(約2t/m2)の場合基礎杭を用いた
構造、20〜30kN/m2の場合ベタ基礎以上の構造、30kN/m2以上の場合布基礎以上の構造である事を証明しなければなりません。建築基準法でも同様のチェックをしなければいけないのですが、申請義務がありません。ザル法なのです。

2、基礎の接地圧強度の検討

長期荷重に対して基礎スラブが耐えられるかを、構造計算によって算出し安全である事を証明しなければなりません。
悪意の建築家・無知な建築家がベタ基礎にしていれば安心だろうと闇雲にベタ基礎を造ってしまっても、板チョコを割った様に基礎スラブが割れてしまう事もあります。

3、地中梁の検討

短期荷重に対して地中梁が安全かどうかを、構造計算によって確認しなければなりません。木造二階建ての家で、最大3t以上の引抜力が柱に掛かる場合があります。それを地中梁が錘になって建物の浮き上がりを防ぐのです。

4、引抜金物の検討

これは建築確認申請でも、行政によって義務付けしている処があります。柱は原則的に土台の上に乗っているだけですから、金物で固定しないと引抜力が掛かった場合簡単に外れてしまいます。それを固定する方法を、告示に拠るマニュアル・略式計算(N値計算法)または応力度計算によって求めねばなりません。

性能表示制度では、その他詳細な設計マニュアル(自己評価書)の提示を要求されますが、大きく建物に影響してくる基礎の検討は以上の4項目です。

次回耐力壁についてお話しします。



H18.01.11

【耐力壁に対する建築基準法と住宅性能表示制度の違い】

木造の家は柱や梁で、地震や台風に抵抗しているのでは無いと、以前にご説明しました。
壁の面があってこそ、木造の家は丈夫でいられるのです。その壁(耐力壁)は建築基準法で細かい
施工方法が定められており、その通り造らないと耐力壁として認められません。
その他の壁は全て無視されます。

住宅性能表示制度ではその他の壁も耐力壁として扱います。基準法の耐力壁と区別する為に
 準耐力壁 という云い方をします。

これだけ、読むと住宅性能表示制度の方が、基準が甘い様にも思えますがそうではありません。
耐力壁は地震力が加わった際に、地震力を地面に逃がしてやる為に引張り力や圧縮力が働きます。
それを伝達する為に、柱の接合部を金物で補強するのですが、建築基準法では耐力壁のみ金物補強を
すれば良い事になっています。

実際は耐力壁で無くても、壁がある限り耐力壁の何割かは、地震力を負担しているハズですから、
同じ様に接合部を金物で補強してやらなければなりません。
住宅性能表示制度ではそこまで踏み込んで、全ての柱に対して金物の検討を強制しています。

住宅性能表示制度では、より実際に則した方法で構造検討を行っています。



H18.01.21

耐力壁の検討は精密差に違いはあっても、建築基準法・住宅性能表示制度両方に検討の義務がありました。
今回ご説明する水平構面の検討は建築基準法にはありません。住宅性能表示制度のみの検討項目です。

大体において建物は縦と横の壁に囲まれています。地震が縦方向又は横方向から来た場合は、素直に耐力壁が働いてくれますが、地震がどちらの方向から来るかなんて、全く判りません。斜め方向から来る場合も充分あります。その時地震力の流れはどうなるのでしょう?

斜めから地震が来た場合、理論上は縦方向・横方向に分散され、それぞれの耐力壁が地震力を負担する事になります。縦・横両方の耐力壁で支える訳ですから一見、より安全な様に思います。

但し、これには条件があります。床面が頑丈である事が要求されるのです。
仮に床面が限りなく弱い建物を想定してみましょう。いくら耐力壁が沢山設けられていても、四角いハズの家が菱形に変形してしまうのが容易に想像できると思います。



H18.01.28

前回のお話しで床面の剛性が地震の際に、大きな意味合いを持つ事はお判り頂けたと思います。

建築基準法では、木造住宅は大工さんの技量に負うところが多く、耐震性に関しても、詳細の取り決めは整備されていないのが現状です。
住宅性能表示制度では、その欠点に大きく踏み込んで木造住宅の構造をより具体的に検証する事が義務付けされています。床面の剛性に対しても、施工の方法により倍率が設定されており、水平剛性の検討を行わなければなりません。

また、住宅性能表示制度では、耐力壁で囲まれた空間の大きさも、問題視されます。10m四方で耐力壁に囲まれた空間と、3m四方で耐力壁に囲まれた空間では、同じ強度の水平構面であれば、3m四方の狭い空間の方がより頑丈なのはお判り頂けると思います。
そこで、床面の剛性別に、耐力壁相互の距離を定めています。(耐力壁線間距離)階段や吹抜け、平面形状によって距離は左右されますので、表にはできませんが計算によって、それらの検討をする事が義務付けされています。